輸入ピアノ 適切な管理が必要な理由
輸入ピアノは管理が大変、故障しやすい、という評価を耳にする方もいらっしゃると思います。たしかに国産ピアノに比べるとデリケートで、日頃の管理には気を使わないと良い音が保持できなかったり不具合が生じる可能性もあります。その原因は一般的に「気候の違うヨーロッパで作られたピアノは高温多湿の日本には合わないから」とされています。
たしかにその通りで、ヨーロッパでシーズニングされた素材は当然ヨーロッパ仕様になっているわけで、環境の違う場所に移動すればシーズニングに再度時間が必要となりますので、この一般的な指摘は正しいと言えます。人も新しい環境に馴染むのにはそれなりの時間が必要なことと同じです。
輸入ピアノ 管理を怠るとピアノはどうなるか
輸入ピアノの管理を怠ると、湿温度変化の影響を受けます。ヨーロッパピアノは殆どのパーツが天然素材で出来ていますので、雨の日に体調が優れなくなるのと同じよう、木もフェルトも鉄も調子が狂ってきます。湿気が高ければ木は膨らみ、低ければ縮みます。更にヨーロッパピアノは堅さの違う色々な木材を組み合わせて豊かな響きを出しますので、木の材質ごとにその伸縮具合も変わります。そうすると木が摩擦したり一か所に負荷がかかったりして、外装の塗装が割れる原因になります。木が動くことで調律が狂う原因にもなります。またスティックといって、アクションの動きが悪くなることで鍵盤の反応が悪くなることがあります。
輸入ピアノと国産ピアノの違い
ヨーロッパピアノは日本だけでなく北南米、アジア諸国にも輸出されています。しかし通常ヨーロッパピアノメーカーは、気候の違う環境で使用するリスクを理由に設計や材質を変えることはありません。ヨーロッパのメーカーにとって最も重要なことは、メーカー独自の音色と響きを愉しめる楽器作りをすることであり、外装トラブルや鍵盤スティックに対応するために材質を変えたり人口素材を入れることはしないのです。ここがヨーロッパピアノと国産ピアノの大きな違いです。
国産ピアノ、ピアノに対する考え方
どんなモノでもたくさん作ってたくさんの人に使ってもらうことを考えると「同一規格」と「不具合を極力ゼロにする」ことが大切になります。そうすることで効率的な生産が出来て、多くのお客様からも満足を頂けるのです。「外装やメカニック上の不具合=不良品である」という考えは、世界一厳しい目を持った消費者とまで言われる日本人にとっては当然の考え方です。国産ピアノが日本の環境で不具合を起こさないのは「日本で作っているから」という理由もありますが、ヨーロッパでも国産ピアノの狂いにくさは高く評価されており、made in Japanの安全神話は楽器の世界でも立証されています。
ヨーロッパピアノ、ピアノに対する考え方
ヨーロッパピアノメーカーにとって最も重要な事は音色と響きのコンセプトを継承し、他では味わえない唯一無二の愉しみを演奏者に味わってもらうことが何よりも優先されます。メーカーの持つ独自の音色と響きは、西洋音楽史を彩る大音楽家たちとの交流、意見交換によって生み出された歴史的な芸術品。天日干しによる木材や鉄骨の自然乾燥、にかわによる接着、メーカーごとに違う弦設計や木材の選定、、、それらはトラブルを防ぐことを前提に選ばれたのではなく、響きと音色のコンセプト達成のために選ばれています。ピアノ愛好家にとってピアノを弾くことが楽しいことであるのは当然の事ですが、ヨーロッパピアノは演奏者の喜びを極限まで高めてくれます。並外れたダイナミックレンジと多彩な音色、鍵盤を通じて指先に伝わる音振動、マホガニーやヨーロッパスプルースなど木材の香り、品格のある外観、そしてピアノの本場という歴史を背負っている風格・・・五感全てにピアノ演奏の愉しみを訴えかけてくるピアノ作りがなされているのです。
年月を掛けて環境に馴染んでゆく過程には、確かに大変な面もありますが、その分愛着も大きなものになり、モノを大切に使っていこうという優しい気持ちも芽生えてきます。キチンとした管理とメンテナンスがあればヨーロッパピアノは100年持ち、世代と世代を繋ぐ架け橋にもなるのです。
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