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デジタルピアノはピアノの代わりになりうるか?総集編

公開日: : 最終更新日:2019/08/15 おすすめ総集編, ピアノショールーム編

IMG_0248-1024x770・ピアノの価格
平成3年、デジタルピアノの販売台数がピアノの販売台数を超えました。その後開きは益々大きくなり、現在の新品ピアノの販売台数は凡そ1万台。最盛期のヤマハは30万台生産していましたから、その減少ぶりには驚かされるばかりです。
さて、そもそもピアノが全国に爆発的に広まったのは1960年代、ちょうど高度経済成長の頃です。当時は初任給が5年で2倍に膨れ上がるような、今では考えられない生活水準の上昇が続いており、当然それに連れて土地、生活用品、その他様々な物価が上昇していきました。
しかしピアノの価格は上昇しなかったのです。その理由は大量生産方式の確立です。特に人工乾燥設備の充実は、自然乾燥のための時間と費用を一気に縮め、生産コストを大幅に削減することに成功しました。
これにより、高度経済成長前は給料の15倍とも言われていたピアノの価格は、世の中の平均月給が上昇することで相対的に価格が下がり、一般の人でも憧れではなく手が届く贅沢品となりました。

DSC00414-1024x766・ピアノは誰のものだったか?
 世の中が豊かになっていく中で、車、テレビ、家電製品など豊かさを象徴するものが飛ぶように売れていきました。そしてその最たる存在になったのがピアノです。
 今でこそ男性もピアノを愉しむ方が増えましたが、高度経済成長当時は女性の嗜みでした。音楽やピアノの持つイメージがそうさせていましたが、自分の娘にピアノを買い与え、一生懸命練習に励み、そして音大に入れる、というのが当時の最上の贅沢とされていたのです。ピアノ以外でも贅沢の実感は出来たのでしょうが、「部屋に籠ってレッスンに励む」という性質のピアノに、どこか箱入り娘的な気高い精神性を感じたのかもしれません。このように当時のピアノは、ある意味生活の向上を実感するために親が娘に買い与えるものでした。

93641cdbe0899bc2eed94e306e456b7c-756x1024・デジタルピアノの登場と躍進
 バブル崩壊後、ピアノはステータスシンボルではなくなりました。それまで豊かさの象徴とされていたピアノは、逆に「お荷物」として扱われる風潮まで出てきました。その大きな原因は「音量」と「スペース」の問題です。都市部では人口増加に伴い集合住宅に住む人が増え、大きな音が出てスペースをとるピアノに、価値を感じなくなってきたのです。
 そのピアノの問題を一気に解決したものがデジタルピアノです。デジタルピアノは音量を自在に変えられ、持ち運びにも便利で場所を選びませんし、調律も必要ありません。ピアノに対する価値観の変遷に合わせて台頭してきたのがデジタルピアノです。
 このようにしてデジタルピアノは普及台数という点において、完全にピアノに取って変わりました。合わせてピアノの練習はデジタルピアノで行い、時々ホールやスタジオでグランドピアノを弾くことで満足されていらっしゃる方も多いです。

DSC00364-1024x754さて、生活上の音の問題をクリアし、多くの人がそれぞれの環境の中で音楽を楽しめるようになったことで、全ての問題が解決したように見えます。しかし果たして本当にそうでしょうか?

ピアノが表現するものは弾き手の心です。心を表現するために、ピアノ発祥の地ヨーロッパでは昔から木、鉄、動物の皮、羊毛など自然界の命あるものに職人が魂を込めて1台1台丁寧に作ってきました。そういう楽器には自然の息吹が宿り、命に触れることが出来ます。命を慈しみ大切にすることこそ思いやりであり、思いやりが豊かな感性を育み、その人間的な感情を表現することがピアノを弾く悦びです。

ピアノは鍵盤のオンオフで音が出るのではなく、鍵盤がアクションを動かしハンマーが弦を叩き、弦が共鳴し、駒を伝わって響板が振動し、その振動が鉄骨やケースを震わせ、それらの多様な振動が空気を震わせることで人の耳に届きます。手作りのピアノは弾き手の気持ち次第で振動が自在に変化するように、生きた自然の素材を使い、職人が感謝の念を表しながら加工し組み立てています。心の微妙な動きが指先、鍵盤に伝わり、音色の変化となって感動を起こすのです。

デジタルピアノは利便性に優れ、環境面や機能面では遥かにピアノを凌ぐ楽器です。でも音楽の本質という部分において絶対にピアノにはなり得ません。何故ならデジタルピアノはサンプリングされた音がスピーカーから鳴るだけですので、音の強弱と音色の変化は一次的には付けられるものの、人の心の複雑な機微を音色の変化や振動、響板の響き、箱の振動等で表現するピアノとは根本的な違いがあるからです。

普段デジタルピアノで練習されてらっしゃる方々も、ステージやスタジオではピアノを弾きたがります。それは無意識のうちにピアノ演奏の愉しみの本質に触れることを渇望しているからでしょう。

DSC00359-758x1024・ヨーロッパピアノ
 ヨーロッパのピアノメーカーは、今でも大量生産方式を取らず良い材料を自然乾燥させ(これが気の遠くなるような時間がかかる)、自然と対話しながら職人たちの手で組み立てられています。ピアノ演奏の本質、つまり心を表現するという事を大前提として。自然の恵みで育った楽器を持つと、楽器を慈しみ、どのように楽器を鳴らせばいいかを自発的に考えるようになります。モノを大切に扱う事で他人の心を大切に扱うことが出来るようになり、更に自分の心も大切に表現するようになります。この丁寧な自己表現が感性を育み、本当の意味での心の豊かさに繋がるのではないでしょうか。

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