ピアノの鍵盤のサイズに関して

サロンでグロトリアンを演奏Q.1 お忙しいところ恐れ入りますが、ひとつ質問があり、ご連絡させていただきました。自分の研究のため、ピアノの鍵盤の標準サイズを知りたいと思っております。調律と直接関係のない件で大変申し訳ございませんが、もしご存知でしたら、教えていただけますでしょうか?
ネットでちらっと見ましたら、標準は
黒鍵:11mm×95mm
白鍵:23mm×150mm
1オクターブの幅:165mm
と書いてあるものもありましたが、これは正しいでしょうか?
別のページには、ドレミの白鍵の幅は22.5mm、ファソラシの白鍵は22.69mm と、微妙に異なるという記述もありましたが、白鍵は全て同じ幅ではないのでしょうか?
我が家のピアノで測定すると、白鍵の幅は22.5mmぐらいのように見えましたが、普通のメジャーでは、0.1mmの差を見るのは無理でした・・・
鍵盤と鍵盤の間にも1mm程度の隙間があるように思えますが、実際のピアノで見ると、隙間の幅も場所によって微妙に異なるように見えます。標準の隙間は何mmかご存知でしょうか?
ご存知の範囲でけっこうですので、お手隙の際に教えていただけますと、大変助かります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

A.1 白鍵は同じ幅で、標準寸法は88鍵の幅:1225mm 1オクターブの幅:165mm 白鍵:23mm×150mm 黒鍵:11mm×95mmと考えて頂いていいと思います。

ただし、あくまでも標準寸法であって、特別注文制作の細幅鍵盤等を除外したとしても、実際のピアノは時代やメーカーによって微妙に差異があるようです。
私も以前鍵盤を板から作ったことはありますが、実際に鍵盤を作る場合以前は1オクターブの幅:165mmを7分割(23.57・・・mm)で製図して電動丸ノコでカットしていきます。
カットする刃の幅を約1mm(これが隣の白鍵とのクリアランスになります)とすると実測の白鍵幅は仰る通り約22.5mmになります。
かなり以前に一部国産メーカーがクリアランスをぎりぎりの0.6mm位で制作していたこともありましたが、(白鍵幅は22.9mm 88鍵の幅:1224.37・・・mm)現在は約1mmに戻っているようです。
また、以前のニューヨークスタインウェイのクリアランスは若干多めの1.2mm位のようです。(白鍵幅は約22.3mm 88鍵の幅:1223.17・・・mm)
電動工具手作業の時代と違い、現代のピアノ鍵盤はコンピューター制御の工作機械で正確に同じものが出来るようになりました。

それから、標準の隙間(クラアランス)ですが、これもご推察のとおり約1mmということになります。この間隔は使用による摩耗等によってバラツキが出ます。調律師は鍵盤下のフロントピンの微妙な傾きでなるべく均等になるように調律に伺った時に調整します。

さて、白鍵手前の部分はご理解いただけたと思いますが、問題はここからなのです。
白鍵の手前部分の長さは現在はちょっと長めの52mm(実測 白鍵:22.5mm×152mm)が主流になってきていますが、48mmや50mmもあります。
で黒鍵と黒鍵の間の白鍵部分の幅も色々あります。(太い指の方はその違いを感じやすいかも)
黒鍵上面の幅や長さテーパーの角度(前から見た台形の形)も微妙に違います。

これらの理由には時代による材料の不足や技術者の思い入れ、鍵盤の文化、当時の演奏者の要求などが考えられます。

また、過去にドレミの白鍵とファソラシの白の前部分の幅が微妙に異なる鍵盤が工作精度は別として過去に存在しないとは言い切れませんが、黒鍵と黒鍵の間の白鍵部分は確かに理論上幅が異なりますが、前部分の幅が異なることは現代のピアノではないと思われます。

我々調律師は0.02mm~0.05mmの精度で高さと深さを調整しようと試みています。
その変化をピアノは表現し人は感じるからでしょう。
ただ、別の角度から見たら黒鍵と白鍵の高さの差異は約12mmもあるんです。
多少の隙間や幅の違い、長さの違いも認識して包み込んだうえで0.02mmの違いを感じ取れる人とピアノの関係はとても素敵だと思います。

IMG_0396Q1.先日、白鍵の長さは標準で150mmと伺いましたが、これは外に出ている(奏者から見える)部分の長さかと思います。おそらく、鍵の支点はピアノの内部に隠れているものと思いますが、白鍵の先から支点までの長さも、標準の長さがありましたら教えていただけますでしょうか?

A1.標準の長さは特にありません。白鍵は割合のみでなくアクションやハンマーのトータルのテコ比率で考えられていますのでいろいろあります。ピアノの大きさからくる打弦点の位置 、アクションサイズに合わせ設計者の経験とメーカーの伝統に合わせて設計されます。

Q2.隠れている部分も含めますと、白鍵全体の長さは、先から支点までの2倍となりますでしょうか。

A2.2倍となりません。いろいろあります。
たしかに大型132㎝くらいのアップライトの場合は力点・支点・作用点の割合が 1:1に近いものがあります。しかし、最近の小型のアップライトやグランドはこの限りではありません。

Q3.白鍵の沈み込み(白鍵を全く押していない状態から、底まで押した状態になるまでに垂直方向に動く距離)にも、標準の長さがございましたら、教えていただけますでしょうか?

A3.標準としてではありませんが、だいたい約1cmです。 メーカー・機種によって参考基準寸法があり9.75mm~10.5mmくらいの間で一応決められています。古い楽器は11mmくらいのもありました。
フォルテピアノは7mmくらいです。
これは、あくまでも基準寸法であり、現場では楽器の状態や演奏者の好みも含めて微調整します。現場での正解は一つではありません。

Q4.白鍵を底まで押すのに最低限必要な力は、標準でどのぐらいになりますでしょうか?(何gのおもりを白鍵に載せたら、底まで下りますでしょうか)

A4.楽器により、まちまちです。白鍵の底までとなるとダンパーの重量又はバネの抵抗それからジャックその他の摩擦抵抗が大きくかかわるので特に基準はないようです。経験上グランドで130~200gくらいの加重で底まで下ります。
鍵盤調整の実際は白鍵の底までの力ではなく初動からジャックが掛かりだす約0~7mmくらいまでのところの動きで重さを調整します。ダンパーの影響を受けないようにペダルを踏んで、もしくはグランドの場合はアクションを出して行います。
初動重量は一般的には低音から高音にかけて55~50gくらいです。もっと軽いものも重く調整されているものもあります。時代によって75gを超える重い楽器もありました。
また、その逆方向、何gの加重で元に戻るか、戻り加重も確認します。これが20g以下だと連打が難しい楽器になります。

Q5.メーカーによっても異なるでしょうか。(例えば、ベーゼンドルファーはスタインウェイより重い感じがしますが、これは気のせいでしょうか・・・)

A5.はい。メーカーによって微妙に異なります。
機種時代によってもかなり開きがあります。
また、ベーゼンドルファーとスタインウェイのタッチ感の違いは多くの方が感じていることも事実ですが、初動加重を量ってみるとベーゼンドルファーが軽い場合もあり、一概には言えません。
重い軽いの感覚は初動重量のみではなく戻り加重や発音の特性、音色、調律の状態、整調の状態、部屋の響きや広さ、整音の状態、そして、設計上のテコの比率や各部摩擦とレール類の強度と形状に影響を受け微量の違いが、感覚的には大きく変わって感じることも多いです。
ベーゼンドルファーとスタインウェイの場合は戻り加重や発音の特徴、設計上のテコの比率、レール類の強度と形状の違いが影響していると思います。

Q6.もし可能でしたら、同様のことを黒鍵についても教えていただけますと助かります。

A6.黒鍵は力点が変わるので支点も少し奥になっていますが上記ご質問の回答としては白鍵と同様です。

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