■デジタルピアノはピアノの代わりになりうるか? -4

DSC00364・デジタルピアノはピアノの代わりになりうるか?

さて、生活上の音の問題をクリアし、多くの人がそれぞれの環境の中で音楽を楽しめるようになったことで、全ての問題が解決したように見えます。しかし果たして本当にそうでしょうか?

ピアノが表現するものは弾き手の心です。心を表現するために、ピアノ発祥の地ヨーロッパでは昔から木、鉄、動物の皮、羊毛など自然界の命あるものに職人が魂を込めて1台1台丁寧に作ってきました。そういう楽器には自然の息吹が宿り、命に触れることが出来ます。命を慈しみ大切にすることこそ思いやりであり、思いやりが豊かな感性を育み、その人間的な感情を表現することがピアノを弾く悦びです。

ピアノは鍵盤のオンオフで音が出るのではなく、鍵盤がアクションを動かしハンマーが弦を叩き、弦が共鳴し、駒を伝わって響板が振動し、その振動が鉄骨やケースを震わせ、それらの多様な振動が空気を震わせることで人の耳に届きます。手作りのピアノは弾き手の気持ち次第で振動が自在に変化するように、生きた自然の素材を使い、職人が感謝の念を表しながら加工し組み立てています。心の微妙な動きが指先、鍵盤に伝わり、音色の変化となって感動を起こすのです。

デジタルピアノは利便性に優れ、環境面や機能面では遥かにピアノを凌ぐ楽器です。でも音楽の本質という部分において絶対にピアノにはなり得ません。何故ならデジタルピアノはサンプリングされた音がスピーカーから鳴るだけですので、音の強弱と音色の変化は一次的には付けられるものの、人の心の複雑な機微を音色の変化や振動、響板の響き、箱の振動等で表現するピアノとは根本的な違いがあるからです。

普段デジタルピアノで練習されてらっしゃる方々も、ステージやスタジオではピアノを弾きたがります。それは無意識のうちにピアノ演奏の愉しみの本質に触れることを渇望しているからでしょう。

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