・ピアノは誰のものだったか?
世の中が豊かになっていく中で、車、テレビ、家電製品など豊かさを象徴するものが飛ぶように売れていきました。そしてその最たる存在になったのがピアノです。
今でこそ男性もピアノを愉しむ方が増えましたが、高度経済成長当時は女性の嗜みでした。音楽やピアノの持つイメージがそうさせていましたが、自分の娘にピアノを買い与え、一生懸命練習に励み、そして音大に入れる、というのが当時の最上の贅沢とされていたのです。ピアノ以外でも贅沢の実感は出来たのでしょうが、「部屋に籠ってレッスンに励む」という性質のピアノに、どこか箱入り娘的な気高い精神性を感じたのかもしれません。このように当時のピアノは、ある意味生活の向上を実感するために親が娘に買い与えるものでした。