・ヨーロッパピアノの音色の方向性を分類してみる(重厚でエネルギッシュ=スタインウェイ編)
さて、大まかな分類をするため、対極的な個性を持ったメーカーであるスタインウェイとベヒシュタインを比べてみたいと思います。
スタインウェイは物理学者のヘルムホルツとともに音響学を楽器に取り入れながら独自の響きを形成してきました。土地柄や産業革命という歴史的背景もあり、世の中は「より大きく、よりスピーディに、より大勢に」という風潮に染まりつつありました。移動手段は馬車から鉄道、車、飛行機へと進化し、大量輸送、大量消費の時代がやってきました。その中で音楽の届け方にも変化が生じ、それまでサロンや小さなコンサート会場での演奏がメインだったものが、大ホールでより大音量で、より大勢に音楽を届けるスタイルが主流となりました。そしてスタインウェイは時代の要求に応える楽器を作っていきます。非常に重厚で音圧感があり、ピアノという音場でうまれた音の塊がppでは収縮し、ffでは華やかに膨張していくような感覚を覚えます。この音作りは、戦後様々なメーカーのお手本となり、多くのメーカーが追随していくことになります。