外装と時代
プレイエルの外装はウォルナットが主流です。それは当時のデザインが大きく影響しているようです。ピアノは当時の家具の流行に合わせて作られ、縦型ピアノは家具のひとつとして代表的な存在感があり、リビングのプリンセスでしょう。脚やパネルの彫刻細部の作りはギリシャやローマの建築様式にルーツを持つようです。
プレイエルはデコラティブなデザインも多くラインナップされています。特にチッペンデール(猫足)タイプは当時の貴族の統一デザインでした。このタイプ、本来はウォルナットの艶消しが当時の基本的決まり事でした。
プレイエルの使用するフレンチウォルナットは木目の明暗がはっきりしていて、個性を主張してきます。
創業1807年。創立2百年を超えるプレイエルの歴史は、現存するピアノメーカーの最古参に位置し、その後のピアノ製造に多大なる貢献をしました。
また、ルノワールの時代ピアノと言えばプレイエルを指したくらいフランス人にプレイエルは浸透していました。ロマンチカはルノワールが何枚もモチーフに使用したピアノの復刻版です。
支柱(バック)と響板
プレイエルの縦型ピアノは大きな特徴があります。それは支柱と呼ばれるピアノ裏側のバックの部分と響板です。
欧州ブナ材をラミネートして、一体整形のバック支柱をして、超!!堅牢に作られています。一体整形だから、工場で湿気防止の完全塗装が可能になります。ヨーロッパ製として日本等の湿気の多い国で納品後のボディートラブルがもっとも少ないのはこの支柱システムに起因するようです。この支柱にイタリアから取り寄せたチレーサ製(イタリア製メーカー「ファツィオリ」の響板にも使用最高級品質)の響板材をサネハギと呼ばれる手法で接いで行きます。この方法はベーゼンドルファーが採用しています。響板のひび割れ対策としては非常に有効な接着構造でしょう。
チレーサ製の響板は色が白く比重が極端に軽いため振動効率が良く弦の振動に素早く反応するようです。第一線のショパン奏者がプレイエルを弾くと「音と音の粒が水彩画の様に滲んで別の色を発生して行くところがプレイエルのすばらしさ」と語っていらっしゃいました。堅牢なバックに超軽量の振動体(響板)が乗っかる構造のプレイエルの魅力でしょう。ペダルを踏んだ時の音の広がりもすばらしい魅力です。
弱音マフラー
通常、縦型ピアノの真中のペダルは、弱音ペダルです。
グランドピアノの真中のペダルはソステヌートペダルで使用目的が異なります。
縦型ピアノは真中のペダルを踏んでロックさせることで、マフラーと呼ばれるフェルトのカーテンがハンマーと弦の間に降りてきて音をかなり小さくしてくれます。
夜の練習やあまりご近所に聞かれたくない場合には有効です。
ペダル
さて、その使用方法ですが、国産ピアノの真中のペダルは踏んで左にずらしてロックするタイプがほとんど。
このタイプはペダル窓(穴)が鍵状になり、景観を崩すとプレイエルは考えます。小動物の侵入経路にもなりかねません。
ペダルデザインも全て重要視するプレイエルはワンプッシュでロック、もう一度踏み込むと解除するシステムです。そのため、ペダル窓もすっきり。
また、マフラーシステムも低音・中音・高音とそれぞれ独立しているタイプで、各セクションにふさわしいフェルトの厚さが選択されます。
昇降システムも軸のロッドには堅牢な金属を使用し、信頼性と耐久性にすぐれています。デザインと機能美それがプレイエルです。
アクション
プレイエルのアクションはレンナー社。ドイツ製、世界のトップブランドです。
アクションメカニックには、信頼性と耐久性そして、音のコンセプトに合致した形状と材料が重要になります。その要求に最高のレベルで対応するアクションメーカーです。
ショパンが好んだプレイエルは音とタッチの魅力に軽やかな明るい響きがあげられます。
プレイエルロマンチカではハンマーウッドに「シデ材」を使用し、求める音を表現しています。
アクションの要、センターレールは積層の欧州ブナ材を使用しています。
鍵盤のパワーや打鍵のパワーロスを少なくしながらも、打撃音を吸収する。
プレイエルの音色を重視する選択でしょう。
弦まわり
プレイエルは長短の3度や6度が特にきれいに響く工夫をしているようです。
ショパンの曲は豊かな低音に支えられた、長短3度6度の響きが頻繁にしかも非常に効果的に使用されています。
当然4度5度に焦点を当てた楽器とは違いが出てくるわけです。
より細かい部分音を必要とするため弦振動に不均等を少なくしました。
バス弦の芯線はレスロー社製六角ワイヤーを採用しています。
そのため、通常芯線は銅線の巻きはじめと終わりをハンマーで潰して変形させて巻き線の固定を計るのですが、一切必要なく断面が均一になります。
低音弦が比較的短い縦型ピアノに特に有効でしょう。
中高音はプレッシャーバーには真鍮を使用し、不純な金属音を減らし、豊かな響きも出せるように工夫をしています。
低音部はアグラフを採用し、音のにごりを少なくして、ペダリングの音の広がりを想定している考えぬかれた構造です。