何をしている所でしょうか? その1
答 木材の強制乾燥 です。
ピアノに使用する木材の種類は針葉樹から広葉樹まで多岐に渡ります。音を伝えて振動させたい部分にはより比重の軽い針葉樹を使います。
また振動の節にしたい所やより強度を必要とする部分は比重の重い広葉樹の堅木を使います。
木材は中の水分(含水率)を調整することで経年変化が少なくなり、より耐久性のあるピアノの材料となります。
数年(場合によっては十数年)自然乾燥をすませた木材は加工前に強制乾燥を行ないます。方法は50度Cの室内温度で3週間乾燥します。
時間短縮のために、温度をもっと上げたり、電磁波(大きな電子レンジみたいなもの)で処理して含水率の調整をすると、木材の細胞構造の破壊につながるのか?長い年月を良い音で歌ってくれるピアノの材料には不向きのような気がします。
牛乳の殺菌に120度で2秒とか最近は60度で30分とかいろいろあるようですが、殺菌も重要ですが、風味を損なわないためには温度を上げ過ぎないことも大切なのではないでしょうか。
ヨーロピアンピアノは「手作り」とよく云われていますが、実際は機械も使用します。しかし、オートメーションではありません。それほどの量産はしないわけです。
理由の一つは良い材料の確保でしょう。
この強制乾燥一つでも長い音づくりの歴史とこだわりを感じます。
Keyの深さを調整しています。
Keyの深さは約1cmです。
Keyを押さえる力を一定にするため工場では写真の様に上部におもりをつけたものでチェックします。
左右のKeyを基準にするため、事前に全体の鍵盤の高さを均一にする必要があります。
鍵盤全体の初期静止の高さはピアノタッチの始動時の抵抗感をかえます。
始動時の抵抗が無さ過ぎる(軽すぎる)場合は鍵盤全体の高さを1mm上げることでも変化します。もちろん深さも全体的に1mm上げて1cmの深さはかえませんので、時間のかかる作業になります。
何をしている所でしょうか? その3
答 響板に響棒を接着しクラウン(響板の膨らみ)をつける機械です。
写真の機械は160cmくらいのベビーグランドの響棒接着の機械です。
大きな大きなホタテ貝のようですね。
その2で接ぎ合わされた響板の厚みは最終的には8mm~12mmくらいに削られます。低音部を薄くしたり、高音部を厚くしたり、周辺部を薄くして中央を厚くするなど、メーカーの求める音によっていろいろ工夫が見られます。
響板は薄い方が振動しやすくなりますが、強度的には弱くなります。そのため響棒といわれる肋骨のような棒で補強します。(ピアノの後ろをのぞいてみて下さい。グランドは下からのぞき込むと分かります。)
また、弦の圧力に負けないように適当な丸み(膨らみ)を持たせる必要もあります。ヴァイオリンやチェロほど膨らんではいませんが、中央で約1cmくらい膨らみます。
答 これから駒を削る所です。
ピアノの駒は2種類あって中高音用(長駒)と低音用(短駒)と呼ばれています。写真は中高音用です。この駒に360本前後の駒ピンが打たれ弦との接触部分を細かく加工します。
グランドピアノの高音側に頭を突っ込んで良く見て下さい。たくさんピンが打たれた駒の上を弦がピンに絡むようにして張られているのがわかります。
堅木(ブナ・カエデ等)が使用されます。
答 響板と支柱の接着です。
響板の周辺部は「まわしぶち」と呼ばれる堅木のリムに接着されます。そのリムは堅牢なバックと一体化しています。しっかりとしたまわしぶちのおかげで響板は膨らみを持続し、弦の圧力に耐えて長く良い音で響いてくれます。
リムと響板の接着材の硬さや工作精度は音の伝わり方や耐久性にも大きく影響します。接着面に隙間があると音は伝搬しにくくなります。また、硬化後でも柔らかい接着剤は不向きです。強力な接着剤で軽い熱と圧力で接着します。
材料の選択、接着剤の選択、接着方法。どれをとっても重要な部分です。
答 グランドピアノの側板を作っています。
現在ではベーゼンドルファーやペトロフを除いて、グランドピアノの側板は薄い板を何層にも合わせて曲げて接着して行きます。
経験上、この部分の材料や接着剤はピアノの重低音に大きく関係するようです。オーディオでも国産とヨーロッパ製の音の違いは低音に特に現れるそうですね。
作り方が同じようでも、材質の違いで製作コストや音が決定的に変わってくる部分のようです。
材料は超一流品がカエデやブッビンガー等を使用。その他は、細かい木材のパウダー状のものを固めたMDFプレートを使用します。量産品はラワン等になります。
完成してしまうと分かりづらい部分ですが、メーカーの販売価格帯によって最も差の出る部分でしょう。
何をしている所でしょうか? その7
答 グランドピアノの鉄骨(フレーム)の裏側です。
鉄骨の裏側はなかなか見る機会はありませんね。
写真はペトロフの鉄骨です。
ピアノ本体に取り付けられるのを待っている所でしょう。
フレームの下の部分にはピン板が取り付けられています。
ピン板はチューニングピンが打ち込まれ、調律の保持に関わる重要な部分で堅木(ブナ・カエデ等)の合板を使用します。
通常、イギリス・フランス派の一流品(スタインウェイやベヒシュタイン)は堅牢な堅木の側板とピン板を先に密着させその後に鉄骨をのせる方法を選択します。
南ドイツ・ウィーン派のペトロフの側板は柔らかい音の伝搬速度が速い針葉樹なので、あえて、縁切りをして密着させないようですね。
答 鉄骨を取付けています。
これは見たら分かりますね。バック(響板と支柱)に鉄骨の位置を決めてドリルで穴をあけて大きなネジで固定していきます。
位置決めの精度がずれると弦長が変わりますから、特に高音部の精度は重要です。何となく見覚えのある形になってきましたね。
答 弦の玉造(たまつくり)です。
弦は鉄鋼の上に打たれたピン(ヒッチピン)に引っ掛けて張られます。
その引っ掛ける部分を作っています。芯線をまあるく曲げてよじって行きます。グランドピアノの低音弦の後ろの方を見て下さい。硬い弦があめ玉の様にねじってありますよ。写真はフランスのプレイエル社です。
答 銅線を巻いて、低音弦の巻線を作っています。
ピアノの低音弦は芯になる鋼鉄線の回りに銅線を巻いて作ります。
このように1本1本を銅線の太さによる違いを手で加減しながら、熟練工が巻いて行きます。
銅線の品質や巻き方また、機械の回転速度によっても音が違ってくるので、各メーカーは非常に気を使います。
ピアノの音色は低音側に行けば行くほど単音に部分音(倍音)を多く含むのが特徴です。
楽器全体の響きにも影響する部分ですので、気にいらない音があるとそっくり交換したりもします。
鍵盤のブッシングを押えて鍵盤の動きを調整しています。
ピアノのKeyはバランス(中央)とフロントにあるピンを挟み込むようにして、横ぶれをしないように上下にシーソー運動します。
ピンと鍵盤ブッシュの隙間が無いと、スティックと呼ばれるKeyを押したら、そのまま戻ってこないような故障の原因になります。
ピアノで一番身近な故障の一つでしょう。
それぞれのKeyの隙間を整えることでタッチも均一化されます。
写真はプレイエルのアップライトの鍵盤です。
ハンマーを取付けています。
ピアノボディに張られた弦に合わせて、ハンマーを接着剤で取付けて行きます。
現代の交差弦式のピアノは中低音のハンマーには角度がついて、斜めになっているので、左右のクリアランスが少なくなります。
左右のハンマーと接触しないような位置に走り(ハンマーの動き)を見ながら、取付け調整します。
アップライトピアノの場合はシャンクと呼ばれるハンマーの柄の部分は先に取付けてあります。それ弦間隔にあわせてアクションンに組み入れて接着します。
グランドピアノの場合、シャンク部分は先にアクション側に取り付けられ、シャンク先端にハンマーを接着して行きます。
何をしている所でしょうか? その13
ハンマーの同時打弦(3弦合わせ)です。
ピアノの中高音は3本の弦を同時にハンマーがたたきます。
3本の弦とハンマーの接触を同時にすることはピアニシモの音は、はっきりと通る音になり、フォルテの音色は割れにく良い音になります。ダイナミックレンジも広がります。弦やハンマーの寿命にも影響し、とても重要な作業です。写真の様にハンマーを持ち上げ、弦に接触させ弾いて当たり具合を確認しながら作業を進めて行きます。アプローチは弦を調整する方法とハンマーを調整する方法があります。
何をしている所でしょうか? その14
ヴォイシング(針刺し・ニードリング)です。一般的に整音と呼ばれる作業はこの作業をイメージする方が多いようです。
ハンマーフェルトは羊毛で出来ており、特に質の良いハンマーの場合は繊維のキューティクルが絡み合って出来ております。
そこに針を刺すことによって、緊張をほぐしてやります。
ピアノはそれぞれの音の弦の反撥力が音程とともに違います。
何をしている所でしょうか? その15
これは、見れば分かりますね。
ピアノの弦を張っている所です。
弦の張り方には、このように弦をまず本体側に取付け、その後、チューニングピンを巻き付けながら、ピン板に打ち込む方法があります。
また、1本だけの修理の場合や部分交換の場合は、チューニングピンを本体に付けたままで、弦を巻き付ける方法があります。
芯線の太さは、最高音で0.75mm前後、中音部分の最も低い所で、1.2mmくらいで、0.025mmずつ段階的に変化します。