ピアノが語ってくれたものシリーズ ピアノの響板特性とハーモニー調律 その12
響板インハーモニシティー
その微妙に下がるKey音には、たまたま『響板インハーモニシティーの影響が出てしまっていた』と考えられます。
1本や2本では下がる変化が少ないのは弦振動エネルギーが足りないからです。
3本になってパワーが増し響板振動が同期することで起こる現象なのです。
ならばピアニッシモでそっと弾けば下がらないのか?
そうです。下がらないのです。
実際のピアノ演奏では強くも弱くも弾きます。
その音はハーモニーの中で主音になったり、属音、下属音になったりもするでしょう。
つまり。U3タイプの場合は36G#・43D#はタッチの強さによって音程が微妙に変化するある意味とても表情豊かなKeyなのです。
他のピアノもこのような特性を多かれ少なかれ持っているKeyが割り振りの中に2~3音存在する事になります。
これらの特性はピアノの欠点ではなくそれぞれの個体の魅力として捉えるべきでしょう。
なぜなら、ピアノと会話することの出来るピアニストは、リハーサルをする事でピアノの特性を理解し、『響板インハーモニシティー』によるそれぞれの音の表情を読み取り記憶し、洗練されたタッチによって繊細かつ大胆に整えたり魅力を引き出したりする事が出来るからです。
そして、『響板インハーモニシティー』は日々調律師が作る基礎音程部分のどれかにおいても作用していたわけです。
我々調律師は、ピアノの個体差によるこの作用を考慮し修正して基礎音程(ピアノの平均律)を作ることが基本になります。