南ドイツ・ウィーン派のフォルテピアノはクラヴィコードという繊細な楽器をルーツとしています。ここでクラヴィコードを簡単に説明します。クラヴィコードの発音原理は、鍵盤を押すとシーソーの向こう側にあるタンジェントという金属片が弦にあたり、接弦している間だけ音が出ます。音量は大変小さく演奏会での使用は困難です。しかし接弦中に鍵盤を押し込むとビブラートの効果を得られたり、小さなダイナミックレンジながら音量の強弱を付けることが可能です。フォルテピアノはチェンバロの最大の欠点だった音量のコントロール性を改善したわけですが、この流派のピアノ制作者のシュタインが開発したアクション機構「ウィーン式アクション」は「イギリス式アクション」に比べ格段にタッチの微妙な変化を音に変換できる繊細なものでした。
このように繊細な表現力に大きな魅力のあった南ドイツ・ウィーン派の流れを汲んだザウターは、やはりモダンのピアノの中にもその響きの片鱗が息づいています。
高音部分は煌びやかなのに決して派手ではなく落ち着きがあり、最高音部までその気品が感じられます。また、低音から次高音までは音色こそピアノですが、音の輪郭はクラヴィコードに通じる端麗さがあります。クラヴィコードはチェンバロに比べて演奏される機会も少ないのですが、古楽器奏者によるレコードもありますのでご興味のある方は聴いて頂くと参考になるかもしれません。大塚直哉さん演奏によるバロック曲集は録音の状態も大変良いのでオススメです。
弾き手をより輝かせ、よりエレガントに見せるザウター。ショールームにはグランド、アップライト両方ご用意しております。ヨーロッパピアノの中でも特別な歴史を持つこのピアノの音色を、是非お楽しみください。