ピアノが語ってくれたもの-その17
インハーモニシティーとテンション
Q.同じくインハーモニシティーが高いスタインウェイやベヒシュタインでは弦の太さがかなり違うようですが?
A. そうなんです。インハーモニシティーが同じでもテンション(弦長と太さ)に違いがあります。このメーカーの違いを分かりやすく比較するために写真の図を考えました。それぞれのメーカーの主張が明確になると思います。縦軸がインハーモニシティーで、横軸がテンションです。この枠の何処にあてはまるかで、このピアノの弦設計は、ハイテンションハイインハーモニシティーの傾向が強いとか、ローテンションハイインハーモニシティーのピアノだとかが分かるわけです。テンションが比較的高い場合、部分音が整理され透明感のある済んだ音色になる傾向があります。つまり、テンションは部分音の出方のバランスに大きく影響します。
Q.なるほど、図を見ると、第1線で評価されてきたピアノメーカーは、特徴ある音づくりのためにそれぞれのポイントを押さえている感じですね。
A. そのとおりです。現在は計測機器やコンピューターの発達で一流の楽器の設計理由が証明できますが、それらがない時代に耳を物差しにしてたどり着いたわけだから凄いことですよね。師匠が弟子にと何世代もかけて受け継ぎながらのピアノ発展史。
この弦設計に適合した部材や形状が考えられ、メーカーの個性につながって行きます。特にテンションの強弱はこの後に説明するハンマーの特性や形状、整音作業にも関わる部分でしょう。