ピアノが語ってくれたものシリーズ ピアノの響板特性とハーモニー調律 その11
ユニゾン合わせで微妙に下がる音
さてそれでは、『響板f0』がピアノ調律作業の中でどのように影響を与えるか考えたいと思います。
割り振り後にロングミュートを外しながらユニゾンを合わせていると・・・
『微妙に下がる音』ってありませんか?
前述したU3タイプを例に挙げるならば黒鍵の36G#・43D#でしょうか。
弾く強さにもよりますが、ユニゾンを合わせると0.5~0.8セントくらい下がる感じがします。
実は35G・42Dも下がっているのですが、これはなかなか気が付きにくい。
なぜなら、私の時代は割り振りの最初の4度37A~42Dを1.1回/秒などと机上の理論で教えていた時代でしたから、42Dが微妙に下がって案外都合良くつじつまが合ったのが理由の一つなのかもしれません。
それはさておき、なぜ下がるのか?これも『響板f0』の成せる業なのです。
響板振動は弦振動ほど単純ではないのとのことですが、やはり8度上5度4度3度
(ド・ド・ソ・ド・ミ)と純正律に響くところが点在していく事が多いそうです。
つまり、24G#にf0を持つU3タイプの響板ボディーは36G#・43D#・48G#が良く振動する特性を持っている事になります。
現象として、割り振りの中の36G#・43D#は1本弦や2本弦では変化がないのに3本目のユニゾンを合わせると微妙に下がるのです。
「自分のチューニングピンセット技術がまだまだ未熟なのか?」
そう思って精進してきた方々も多いのではないでしょうか?
ところが実は、未熟な腕が原因ではなかったのです・・・。