・ピアノの価格
平成3年、デジタルピアノの販売台数がピアノの販売台数を超えました。その後開きは益々大きくなり、現在の新品ピアノの販売台数は凡そ1万台。最盛期のヤマハは30万台生産していましたから、その減少ぶりには驚かされるばかりです。
さて、そもそもピアノが全国に爆発的に広まったのは1960年代、ちょうど高度経済成長の頃です。当時は初任給が5年で2倍に膨れ上がるような、今では考えられない生活水準の上昇が続いており、当然それに連れて土地、生活用品、その他様々な物価が上昇していきました。
しかしピアノの価格は上昇しなかったのです。その理由は大量生産方式の確立です。特に人工乾燥設備の充実は、自然乾燥のための時間と費用を一気に縮め、生産コストを大幅に削減することに成功しました。
これにより、高度経済成長前は給料の15倍とも言われていたピアノの価格は、世の中の平均月給が上昇することで相対的に価格が下がり、一般の人でも憧れではなく手が届く贅沢品となりました。