*

ベヒシュタインが自社工場にてハンマーヘッドの製作を開始 -3 輸入ピアノ BECHSTEIN

ベヒシュタインその音色の美しさ

結果:より良い響きへ

IMG_0404最終的に大切なのはその音(響き)です。もちろん音(響き)はハンマーヘッドだけではなく様々な要因によってつくられるものですが、ベヒシュタインはよりよい楽器にするために、何十年にもわたって絶えず改良を続けています。ベルリンとザイフェナースドルフのベヒシュタインのスタッフ全員がピアノの最良の響きについて考えています。

「最良の響き」とはどのようなものでしょうか? Leonard Duricicは次のように表現しています。「オーケストラの弦楽器奏者はベヒシュタインの極めてクリアな音色のおかげで、その音をすぐに聞き分けることができます。それは無味乾燥でも、刺々しいわけでもなく、クリアで力強いからなのです。私たちにとって「音のあたたかみ」は絶対です。よい楽器はオーケストラに拮抗できる力強さだけでなく、ソロリサイタルで理想的なドルチェを奏でる繊細さがなくてはなりません。

IMG_0405アグラフの時代を経て、1990年代初頭にベヒシュタインは再び(アグラフに代えて)カポダストロバーを使いはじめました。Duricicはこう付け加えます。「アグラフを取り入れた楽器の澄んだ音色は第2次世界大戦までは広く受け入れられていました。しかし、ジャズやその他の音楽スタイルの出現によって急速に時代遅れになってしまいました。それにもかかわらず、ベヒシュタインはカポダストロバーを採用するまでには長い時間がかかりました。1980年代にKarl Schulzeがベヒシュタインを引き継ぎ、新たなスタートを切ったときでさえ、すでに設計されていた新たなモデルにアグラフを採用しないという選択には消極的でした。ベヒシュタインというブランドからアイデンティティーが失われることを恐れたのです。そして1994年、ついに私たちはこの考えを捨て去りました。最初に小型のグランドピアノにカポダストロバーを採用し、4年後にはコンサートグランドにも取り入れました。このことはつまり、1860年にCarl Bechsteinが取り入れていた従来の方法に徐々に戻ったのだと言うこともできます。もちろん現代的なサウンドを作るために。

IMG_0406響きに影響を与える設計その他の変更は、その時代の響きの嗜好に合うように実現されます。「新たな楽器を設計する際には、初期段階から最終的な音色について考えておかなければなりません」、Konigはそう説明します。しかしながら思い描いた音を作り出すことに成功したか否かを判断できるまでには、多くの楽器を製造する必要があることは言うまでもありません。音楽家やピアノディーラーからの評価はこの点において、非常に重要です。

長年に渡ってベヒシュタイン社内での製造とハンマーヘッドフェルトの品質管理に携わってきたMatthias Konigは別の改革についても言及しています。従来よりバックフレーム(アップライトだと背面から、グランドだと下面から見える硬い梁)は、部品供給業者から仕入れることが通例でした。マイスターピースのグランドピアノについては、スプルースを使うほかの多くの製造業者とは異なり、ベヒシュタインは非常に硬い松材で(バックフレームを)自社製造しています。さらに現在では、支柱はただ単にニカワで接着する代わりに、しっかりと嵌め合わされています。ここでは2つの例ではありますが、部品供給業者からの自立と技術革新……これこそが最高レベルのピアノ製造において、ベヒシュタインが他メーカーとの差別化をはかるための重要な戦略です。

ヨーロッパで製造されるピアノが急減するなかでピアノ部品製造業者は、生き残っていくために価格を大幅に引き上げるか、もしくは品質を落とすという安易な方法を選ぶかの苦しい岐路に立たされています。Durcicが指摘するように、(ドイツでは)ベヒシュタインのような株式(合資)会社が半製品を購入する際には2つの業者から仕入れを行うように法律で定められています。品質の安定を考えた場合、実際には言うがやすし、行うは難しですが…。そこで目指したのが、供給業者頼みではない自給という道です。
供給業者からの自立への第1歩は、木材その他の素材を加工する際にその専門技術を活かして自社で製造することです。自給の分野は現時点ではまだ限定的で、Freymuthは「私たちは金属加工をするつもりはない」と言っています。

IMG_0407ベヒシュタイン独自のハンマーヘッドと自給の効果について話を戻します。整音室には、2台のベヒシュタインD282が並べて置いてあります。1台は部品製造業者によるハンマーを取り付け第1次整音を終えたもの、もう1台はベヒシュタイン自社によるハンマーを取り付け未整音のもの。

IMG_0408Klingsinは次のように説明してくれました。「Mr.Kempfeはアップライトピアノのハンマーをほんの少し大きくし、それをグランドに適用しました」。アップライトのハンマーのほとんどはグランドほどコストはかかりませんが、それにも関わらずその音は深い感動を与えてくれました。よりあたたかく、上部倍音が豊かで、より容易に表現の幅を広げられるように感じます。アタックポイントについても異なり、特に静かに弾く際にコントロールしやすく、雑味が少なく順応性に優れています。その音は在りし日のベヒシュタインの抒情的な音色を、あたたかな音色を、呼び起こします。にもかかわらず力強さも兼ね備え、グランドピアノはどのような音であるべきかを気づかせてくれます。
会社のショールームにある2台のConcert8(最上位機種)は整音され販売を待っています。これらは新たなハンマーヘッドの高い品質を証明するもう一つの例です。すでに(上記の)未整音のハンマーを取り付けたコンサートグランドの、際立った音の変化にすぐに気がついたように。その音は抒情的であたたかく、かつ豊かな音量を持っています。ごくわずかなタッチの変化にも敏感に反応し、驚くほど広いダイナミクスレンジを備えています。

私たちの訪問が終わりに近づいたとき、Stephan Freymuthはこう言いました。「新たな改良が進行中であり、それはアクション機構全体に関することになるだろう…」と。

ピアノが語ってくれたもの

パッサージュメニュー

pick-upおすすめ記事

イベント情報

ブログ

パッサージュ動画

おすすめ記事

関連記事

C.BECHSTEIN アカデミーA.160 新品 入荷しました 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

展示ピアノ「 UP・GP・価格別」 ベヒシュタイン アカデミーA.160 「最高の材料、

記事を読む

C.BECHSTEIN Contur118 入荷しました 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

木目ピアノフェア中 仕様:ベヒシュタイン Contur118 ブラン

記事を読む

輸入ピアノ購入のためのメール講座 全10回 受付無料配信中!

輸入ピアノの素朴な疑問 人ぞれぞれのピアノ選び 気になること、心配なこと 輸入ピアノ購入のため

記事を読む

入川 舜 ピアノサロンコンサート Vol.2 ~小野木遼(チェロ)氏を迎えて~ 第1回2023.6.10(土)18:00~

入川 舜 ピアノサロンコンサート Vol.2 ~小野木遼(チェロ)氏を迎えて~ 第1回 2023.

記事を読む

太田太郎 ピアノサロンコンサート 2023.6.11 14:00開演

太田太郎 ピアノコンサート 2023.6.11 14:00開演 入場料 300

記事を読む

「男のコンサート」Vol.46  2023年6月25日(日) 開演13:00 入場無料要予約!

サロン・ド・パッサージュ「男のコンサート」Vol.46 男のコンサートVo.46 (R5.

記事を読む

素敵なお仕事 人生に前向きになりより幸せになる能力を身に付ける方法 ピアノレッスン

「あなたにとって世界一素敵なお仕事は何でしょうか?」とたずねられたら? ピアノ調律師!と答えたいと

記事を読む

スタインウェイ O-180 STEINWAY&SONS 入荷しました。

ホーム    STEINWAY&SONS スタインウェイ O-180 スタインウェイの華や

記事を読む

PLEYEL P-115の納品に行きました。

PLEYEL P-115の納品に行きました。 待ちに待ったピアノが届いて、 これから

記事を読む

『ピアノ調律師』の『立ち位置と領分』   

『ピアノ調律師』の『立ち位置と領分』                               

記事を読む

C.BECHSTEIN-M180 の納品に行きました。

C.BECHSTEIN-M180 の納品に行きました。 C.BECHSTEIN-M18

記事を読む

C.BECHSTEIN アカデミー A.2 新品 入荷しました 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

展示ピアノ「 UP・GP・価格別」 その音色の美しさ ベヒシュタイン アカデミー A.2

記事を読む

C.Bechstein-L165の納品に行きました。

C.Bechstein-L165の納品に行きました。 長年、調律にお伺いさせていただい

記事を読む

C.BECHSTEIN Mod.M-180 マホガニー艶消 近々入荷 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

ベヒシュタイン Mod.M-180 マホガニー艶消  総アグラフのベヒシュタイン 人気のMod.M

記事を読む

「ピアノが語ってくれたもの」シリーズ1 その1~41

以下の文章は(社団法人)日本ピアノ調律師協会 会報No.117・118(2002年)に投稿された文章

記事を読む

「ピアノが語ってくれたもの」シリーズ 2 ピアノの響板特性とハーモニー調律 その1~その48

以下の文章は(一般社団法人)日本ピアノ調律師協会 会報No.170・171(2020~21年)に投稿

記事を読む

C.BECHSTEIN-K158の納品に行きました。

C.BECHSTEIN-K158の納品に行きました。 ドイツからの到着を、去年から、ず

記事を読む

ピアノパッサージュブログ一覧

新着プログ一覧 ピアノメーカー ピアノコンサート ピアノレッスン 小さな

記事を読む

C.BECHSTEIN S-145 Chippen 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

BECHSTEIN Mod.S-145 Chippen 貴重なチッペンデール。 仕様:BEC

記事を読む

スタインウェイ S-155  Chippen ! STEINWAY&SONS 入荷しました。

ホーム    STEINWAY&SONS スタインウェイ S-155 Chippen スタ

記事を読む

ベヒシュタイントーンシリーズ Vol.4 『アップライト』の魅力と可能性 ベヒシュタイン&ホフマン

ベヒシュタイントーンシリーズ Vol.4 『アップライト』の魅力と可能性 ベヒシュタイン&ホフマン

記事を読む

C.BECHSTEIN Classic124の納品調律に行きました

C.BECHSTEIN Classic124の納品調律に行きました 春めいた陽気の中、

記事を読む

C.BECHSTEIN ミレニアム116K 新品 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

その音色の美しさ ピアノ椅子 ピアノサポートグッズ ベヒシュタイン ミレニアム116K

記事を読む

展示ピアノ「 UP・GP・価格別」

展示ピアノ:アップライト 展示ピアノ:グランド 展示ピアノ:100万前後 展示ピアノ:

記事を読む

『ベヒシュタイン技術者の会』に向けて ベヒシュタイントーンシリーズ Vol.3 ピアニストが一言『タッチ』と表現したとしても・・・

ベヒシュタイントーンシリーズ Vol.3 ピアニストが一言『タッチ』と表現したとしても・・・  

記事を読む

木目調のピアノが見たい! 輸入ピアノ アップライト 試弾会 開催中

木目のピアノが見たい! 輸入ピアノ アップライト 試弾会 開催中 高価になった木目調のピアノ

記事を読む

ペトロフ、P118、P1、ビーチ色の納品調律に行った。

ペトロフ、P118、P1、ビーチ色の納品調律に行った。 先日の発表会で、【上手に弾けたんだよ!

記事を読む

F1のメッカ!鈴鹿サーキットに行った。

F1のメッカ!鈴鹿サーキットに行った。 途中にう~ん?! ドイツのお城がある・・・。 ここは三重

記事を読む

ペトロフ P-118D1 チェリー  輸入ピアノ PETROF

カスタマーインタビュー ■ご購入モデル:ペトロフ P-118D1 チェリー ■お客様:M様 

記事を読む

ベヒシュタインの調律に行った。

ベヒシュタインの調律に行った。 お仕事が忙しいので夜しかなかなか弾くチャンスが無いそうで・・・。

記事を読む

ベヒシュタイン クラッシック118 の納品調律に行った。

ベヒシュタイン クラッシック118 の納品調律に行った。 ポケモンの仲間たちと…。 ハイ チ

記事を読む

C.BECHSTEIN アカデミーA.160 新品 入荷しました 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

C.BECHSTEIN Contur118 入荷しました 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

輸入ピアノ購入のためのメール講座 全10回 受付無料配信中!

入川 舜 ピアノサロンコンサート Vol.2 ~小野木遼(チェロ)氏を迎えて~ 第1回2023.6.10(土)18:00~

太田太郎 ピアノサロンコンサート 2023.6.11 14:00開演

「男のコンサート」Vol.46  2023年6月25日(日) 開演13:00 入場無料要予約!

素敵なお仕事 人生に前向きになりより幸せになる能力を身に付ける方法 ピアノレッスン

スタインウェイ O-180 STEINWAY&SONS 入荷しました。

PLEYEL P-115の納品に行きました。

『ピアノ調律師』の『立ち位置と領分』   

C.BECHSTEIN-M180 の納品に行きました。

C.BECHSTEIN アカデミー A.2 新品 入荷しました 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

C.Bechstein-L165の納品に行きました。

C.BECHSTEIN Mod.M-180 マホガニー艶消 近々入荷 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

「ピアノが語ってくれたもの」シリーズ1 その1~41

「ピアノが語ってくれたもの」シリーズ 2 ピアノの響板特性とハーモニー調律 その1~その48

C.BECHSTEIN-K158の納品に行きました。

ピアノパッサージュブログ一覧

C.BECHSTEIN S-145 Chippen 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

スタインウェイ S-155  Chippen ! STEINWAY&SONS 入荷しました。

ベヒシュタイントーンシリーズ Vol.4 『アップライト』の魅力と可能性 ベヒシュタイン&ホフマン

C.BECHSTEIN Classic124の納品調律に行きました

C.BECHSTEIN ミレニアム116K 新品 輸入ピアノ ピアノパッサージュ

展示ピアノ「 UP・GP・価格別」

『ベヒシュタイン技術者の会』に向けて ベヒシュタイントーンシリーズ Vol.3 ピアニストが一言『タッチ』と表現したとしても・・・

木目調のピアノが見たい! 輸入ピアノ アップライト 試弾会 開催中

三浦一宏・真由美 ピアノデュオコンサート 2023.5.21 13:30 16:30

→もっと見る

PAGE TOP ↑