ピアノが語ってくれたもの-その8
演奏者のスタイル
Q.演奏者によって好みのタッチがあるのでしょうか?
A. そうですね。人それぞれ顔形や手も含め骨格も違います。ピアノのポテンシャルを損なわない範囲のそれぞれにあった調整基準は存在すると思います。寸法的にはほんのわずかの違いなのですが、整調基準と演奏者に相性のようなものを感じます。
音楽の友者から出ている「ピアノ演奏テクニック」(ヨーゼフ・ガード著)に記載されている鍵盤の「上部雑音」と「下部雑音」の部分は大変参考になりました。上部雑音とは鍵盤上面との接触音。爪などが当たる音等です。下部雑音は鍵盤が底に届いたときの振動音等です。
また、全音楽譜出版社の「ピアノ奏法の基礎」(ジョゼフ・レヴィーン著)の挿絵も参考になりました。ピアノの鍵盤を指の腹の部分で押すのか、爪の近くでたたくのか。指の太さ、腕の重量。姿勢や力の入り具合で音は変化するようです。
Q.重力奏法とか、脱力奏法とか、ハイフィンガー奏法とか。確かにいろいろな奏法が提唱されていますね。
A. いろいろな奏法を駆使して演奏者は「求める音」を作り出そうとするわけです。調律師はその可能性を広げなければならないわけです。音はエネルギーですよね。演奏者の鍵盤を押すエネルギーをピアノハンマーの回転運動に変えるものがアクション部分です。作業の基本は、エネルギーロスを減らすことでしょう。それと、矛盾するようですが、奏者のコントロール性を損なわないための抵抗感も重要です。