■プレイエルとスタインウェイで録音された仲道郁代「ショパン・ワルツ」リリース

プレイエル展示中

SICC000019006__180_180_102400_jpgピアニストの仲道郁代さんがショパンのワルツ集をリリースしました。今回のCDは17曲のワルツをそれぞれ「21世紀のスタインウェイ」と「19世紀(1826年製)のプレイエル」で録音したという意欲作。ご承知の通りプレイエルとはショパンが生涯愛したピアノメーカーで、ショパンの名曲の殆どはこのピアノの響きを想定されて書かれたと言っても過言ではありません。録音で使用されたプレイエルが製造された1826年はショパン16歳、ちょうどワルシャワ音楽院に入学した年に作られたピアノです。この4年後ショパンはパリへ移住、パリで初めてのコンサートはプレイエル社が運営するホール「サル・プレイエル」で行われ、華々しいパリデビューを果たしました。

1700年~1800年代のピアノは現代のピアノと区別して「フォルテピアノ」と呼ばれます。ショパン存命中のヒストリカルな楽器を奏でることで、この録音では今のピアノの音だけでは認識できないショパンの美意識に迫っています。古楽器の響きにも様々なものがありますが、総じて言えることは現代ピアノに比べて音が繊細であること。クラヴィコードやチェンバロは勿論の事、フォルテピアノも構造こそ現代ピアノに近づきつつありますが、響きの基本的な形は繊細で混じり気のないシンプルな響きと言えます。
また古楽器の活躍していた時代の演奏会場と言えば小規模なサロンが一般的で、大ホールのように大勢の聴衆に向けて音楽を発信する場は殆どありませんでした。
これらの時代背景や楽器の編成を念頭に置きながら聴いてみると、同じ曲でも今まで感じられなかった作曲家の意図への気づきがあり、エキサイティングな音楽体験を得られるものです。

プレイエルの楽器は古今問わず響きの鮮明さがあり、この録音でもその特徴がしっかりと収められています。実際に聴いてみると打弦タイミングのズレや、バス・内声・メロディのニュアンスの違いがハッキリと認識でき、各楽曲が奥行きと立体感をもって聴き手に迫ってきます。響き全体はシンプルだけれども、それゆえ飾り気のない赤裸々な楽曲の魅力を堪能できると同時に、当時のサロンの雰囲気に包まれる感覚も楽しめます。
鮮明な響きを作る楽器の構造上の特徴は響板にあります。響板低音弦側にはメインリブと呼ばれる棒が付いており、響板で音振動が乱反射するのを防ぎます。そして現存するピアノメーカーでこの構造を引き継いでいるメーカーがベヒシュタインです。創業者のカールベヒシュタインはプレイエルのドレスデン工場で修業し、更にプレイエルの流れを組むクリーゲルシュタインで修業を重ねました。創業当時の構造は、この録音で使用されたプレイエルと非常に似ている構造をしており、現代のベヒシュタインの響板も、音量よりも響きの鮮明さを優先した造りとなっています。
ピアノパッサージュではプレイエルの1878年製アップライト、ベヒシュタインの新品とUsedアップライトなどを展示しています。ショパンの時代から引き継がれてきた響きの芸術を、どうぞお試しください。

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