ピアノが語ってくれたものシリーズ ピアノの響板特性とハーモニー調律 その13
平均律の割り振り数値理論
ピアノ調律をメーカー育成所や専門学校等で学ぶ時、最近の割り振り(平均律)数値表記においては『弦インハーモニシティー』を考慮して4度や長3度のうなり数を理論値より少なめにして指導されるようになってきたようです。
これは我々の時代より一段進歩している指導法だと思います。
そしてそれは入門期の基準としてはそれでいいと思います。
しかし、その先を極めていくには、一律のビート(うなり)数字表記には無理というか限界があることを感じます。
割り振りのビートを数値指定したいならば、どのメーカーの、どの時代の製作で、どのサイズのピアノなのか明記して限定利用するべきでしょう。
そして、その上に『響板インハーモニシティー』の影響も考慮しなければならない。
ユニゾン後にピアノ本来の理想ハーモニーを目指すならば、ロングミュート使用の割り振りビート指定する場合においては、4度5度のうなりが高音側に向かってなだらかに増えるとは限らないという事が前提になります。
これらの矛盾を少しでも回避するためか、コンサートグランドの調律時やドイツ一流メーカーでは割り振りの範囲を広げて基礎音程を作る工夫をされている場合も多々見受けられます。
幸いなことに例に挙げたU3タイプは響板にかかわるような大きな設計変更は行われていないようですから、『超絶!U3限定の割り振りビート値』とか作ってみるのは、面白いかもしれませんね。
また、スタインウェイ社も130年近く基本的な設計変更は行われていないようです。
興味ある方は『究極!スタインウェイB-211のための割り振りビート値』等を研究してみては如何でしょうか?
「理論から調律を学ぶなら、そして、アップライト等の小型ピアノで修業を始めるなら、最初にこれを理解して実践したかった。」と今ではつくづく思います。
理論と現実の歩み寄りが進んでよりハイレベルでの理論が構築され、今後の技術指導に生かされて行く事を期待したいものです。
それがそれぞれのピアノ本来のポテンシャルを引き出し、演奏者が求める表現力の幅が広がる事になると思います。