近年、ピリオド楽器に脚光が当たってきているようです。
グランドピアノは19世紀末から20世紀初頭に交差弦に移行してきました。
ところが、近年、ベルギーやフランスで平行弦のピアノが製作され始めています。
なぜ平行弦が見直されつつあるのでしょうか?
そこで交差源と平行弦のそれぞれの長所を考えました。
交差弦の長所
小型のピアノでも中低音部の弦長をより長く設計できる
低音駒の位置を響板左端から中央に移行することでより豊かな響きを得る
中音弦の上に低音弦が重なるように隣接することで豊かな共鳴を得る
平行弦の長所
弦の高さが一定
音の透明感が高い
ハンマーに角度調整による負担や寸法調整が少ない
視覚的にスッキリしている(好みの問題?)
シンプルに考えると音の透明感やメカニック的には平行弦のほうが有利で豊かな響きや音量的には交差弦が有利と考えられます。
小型サイズのピアノ、特にアップライトには交差弦の設計が有利でしょう。
交差弦はピアノをコンパクトにするための知恵とも考えられます。
C.BECHSTEIN 平行弦コンサートモデル
カール・ベヒシュタインが働き盛りの54歳のコンサートモデル。
彼はここまで作り込んでいた・・・。
1880年製 平行弦 88Keys 象牙黒檀仕様
時代的にベートーベンやショパンは「平行弦」のピアノで作曲しています。
現代のピアノ「交差弦」とは一味違う音の透明感や響き。
ピアノはオーケストラの言葉をより実感でき、多くのインスピレーションを感じられることと思います。
ぜひ一度ご試弾ください。
ドイツ・ワイマールにあるリストハウスのベヒシュタインも製造年がほぼ同じの平行弦モデルと思われます。
アクションタイプはヘルツ式ダブルスプリングで、アブストラクトを装備しています。
アブストラクトとはKeyとアクション部のウィッペンを連結したタイプのことで、より一体化させて反応を良くするための工夫でもあります。
ベルリン伝説『赤いベヒシュタイン』
19世紀末ベルリンのホールでは毎夜コンサートが行われていました。
そのホールには常連客のみが知る赤いベヒシュタインがあったそうです。
滅多にない赤いベヒシュタインが舞台に鎮座していたら常連客の期待は高まったそうです。
そして出てきた演奏者は必ずその期待以上のピアニストだったそうてす。