ピアノが語ってくれたものシリーズ ピアノの響板特性とハーモニー調律 その17
ピアノは大きい方がいいの?
ピアノの『響板f0』だけに焦点を当てて考えると、ピアノは大きければ大きいほど優秀ということになります。
しかし、低音と高音の音量音質バランスも重要ですし、重量や強度、置き場所の事やその他の物理的制限、いろいろな観点、要望から今それぞれのサイズが生まれてきたのだと思います。
大型小型にかかわらずピアノは完全ではありません。どこかに必ず矛盾(特性)を持っているものです。
そしてより、小型ピアノやアップライトピアノのほうが机上の理屈も通用せず、理論的な矛盾(特性)を強く多く持っている可能性が高いのは間違いないでしょう。
だからこそ、我々ピアノ調律師は家庭用小型ピアノには中途半端な理論より現物合わせの方を優先し、楽器個体それぞれの声をよく聞く必要があるという事になります。
コンサートグランドピアノの技術が、意外にも小型ピアノには通用しないことも多い訳です。
ならば、「小型ピアノは出来が悪いピアノなのか?」
決してそうではありません。小型ピアノはバランスよく作るのが難しいが故に、メーカーは苦心しながら鋭い感性で長年修正を重ね、見事なまでに一つの方向性をもって設計製作されたものも数多く存在しています。
多くの先人達の努力と感性のたまものが小型ピアノには受け継がれているのです。
そして、ご家庭にある小型ピアノこそが、本来の魅力を伝えることの出来る最前線であり、第一歩であるわけです。